ある青年が女の子に恋をした。彼女は青年の友人の、所謂元カノだった。そのせいで青年は友人達に悪く言われる日々もあったが、彼女のことを本気で好きになった。

だが彼女には他にも好きな男の子がいた。決してどちらかに決めるという事は無かった。寧ろ、もう一人の男の子の方が好きだったのだろう。少なくとも、その青年ただ一人を愛することは無かった。


青年はそういう状況に耐えられなくなり、彼女と会うのをやめた。

やがて他の女の子と知り合い、それは必ずしも彼の理想の女の子では無かったかも知れないが、その娘と暮らすことが、違う自分へと踏み出す機会になると信じた。そして、その娘と結婚し、家庭を築いた。

その娘には少し、難しいところがあった。それでも、長く連れ添うことで、お互いの隙間が埋まってくるだろうと、彼は信じた。だがそれは年月を経て、寧ろ大きな溝となった。結局、夫婦の仲は破綻し、彼は再び独りになった。


二十数年も経ってから、彼は再び冒頭の女の子と再会する。あれから色々あった。全ては過去のこととなった今なら、彼女も自分を受け入れてくれるのではなかろうか、と。

だが彼女は相変わらずだった。彼女には彼氏がいて、それでも彼は彼女と会い続けるのだが、それは、過去のそれと何も変わらなかった。


そうではない、と信じたくてそんな日々を続けていたある日、全くの偶然で、彼は旧友と再会してしまう。その旧友とは誰でもない、若き日の青年の友人、その彼女の元彼であった。彼は、青年が結婚した頃に事故で昏睡状態となり、目覚めた時にはある時点より過去の記憶を失ってしまった。彼の頭に残っているのは、その彼女と別れる前までの事で、彼は何故目覚めた時に彼女がいなかったのか、彼女との間に何が起きたのかを、青年(といってももう十分中年なわけだが)に問うのだ。その問いはそのまま、彼が忘れたいと思っていた過去の気持ちを、そのまま連れ戻す事となった。


そしてその気持ちと今の気持ちを照らし合わせた時に、彼自身も何も変わっていなかったことを悟った。色々な経験を経て、違う自分になったかのように思っていたのはまるで錯覚で、そう、人は本質的には、何も変わりはしないということを彼は知り、再び、独りに戻るのだった。



という映画を観た。そして映画館を後にした。



そうねえ。人は変われない。長く生きれば、上手くやり過ごす術を身につける事は出来るかも知れない。しかし本質的には、何にも変わりはしない。


太陽の黒点が減少して、地球は再びプチ氷河期になっていくのだそうだ。そんな風に、取り巻く環境が大きく変わって行くとしても、人は変われない。皆、運命の上を滑り降りて行くでしかない。でもそれでいいんじゃないかなと、この頃は思う。焦ることも悩むことも、何もない。只々人生を全うしていくだけだ。